KAME プロジェクト便り

山本和彦
IIJ 技術研究所
BSD Magazine No. 7 (2001/03)


第7回 実験とイベントの報告

今回は、リリース状況、2 つの実験、および、イベントの報告をします。


BSD 制覇

IPv6 と IPsec を含めた KAME のコードは、 4 つの BSD の current (あるいは beta)バージョンにマージされていました。 本紙の読者ならご存じだと思いますが、 下記のように、作年末までに 4 つの BSD の最新版がリリースされました。 これに伴い、KAME のコードは、 4 つの BSD の正式バージョンを制覇したことになります。 (ただし、OpenBSD は IPsec に対し独自の実装を使用しています。)

BSD/OS 4.22000年11月29日
FreeBSD 4.0 (4.2)2000年3月14日
NetBSD 1.52000年12月6日
OpenBSD 2.82000年12月1日

リナンバリング合宿

IPv6 では、ホストにアドレス自動設定の機能が標準で装備されています。 また、アドレス自動設定に関する情報は、通常ルータから受け取ります。

ルータがアナウンスする情報を変えると、 ホストのアドレスが付け換わります。 よって、サイト内のすべてのホストのアドレスを付け換えるには、 ルータのアドレス付け換え、アナウンスする情報を変化させればよいことになります。

現在、ルータのアドレス付け換えを自動化するルータ・リナンバリング・プロトコルが RFC となっています。

KAME ではこれを実装していますが、 本格的に運用したことがありませんでした。 そこで、2000年11月7日から9日にかけて合宿を組み、実験しました。

結論としては、アドレスに依存した設定のないサイトでは、 良好に動作することを確認しました。アドレスに依存した設定とは、 たとえば経路集約やアドレスに基づくパケットフィルタなどです。


MIP6 相互接続テスト

前回お話ししたように、KAME をもとにした MIP6(Mobile IPv6)には、 NEC、SFC、Ericsson による独立した 3 つの実装があります。 また、ヘルシンキ大学は Nokia のスポンサーのもと、 Linux ベースでの実装を提供しており、 USAGI プロジェクトは両者と協調関係にあります。

このように実装がそろってきましたので、 2001年1月23日に相互接続実験の機会を作りました。 これには、Ericsson のコードを除く以下の実装が参加しました。

NEC
移動ノード、固定ノード、ホーム・エイジェント
SFC
移動ノード、固定ノード、ホーム・エイジェント
ヘルシンキ大学
移動ノード、固定ノード、ホーム・エイジェント
KAME
固定ノード

移動ノードとホーム・エイジェント間では、 IPsec による認証が必須です。 また、移動ノードと固定ノード間では、認証は必須ではありませんが、 認証が利用できれば経路を最適に制御できます。

上記のように登場人物が多く、たくさんの組合わせがありますが、 簡単に結果を述べておきます。 認証を使わない場合は、おおむねうまく通信できました。 ただし、これでは移動ノードとホーム・エイジェント間の通信は、 規格にそっていないことになります。認証を使った場合は、 問題が多かったので、次の相互接続実験で頑張る予定です。

また、この実験の成果の 1 つとして、 KAME ベースの 3 つの実装から、 固定ノードに関する部分を抜き取って、マージしたことが挙げられます。 KAME の最新の snap をインストールすれば、MIP6 の機能を活かさずにコンパイルしても、 固定ノードとして移動ノードと通信できるようになりました。


Global IPv6 Summit in Japan

前回宣伝させて頂いた、Global IPv6 Summit in Japan が 2000年12月18日 から 19日にかけて開催されました。 これは、IPv6 Forum という団体が主催する Global IPv6 Summit の名を借りて、 日本で IPv6 に携わる人たちがボランティアベースで運営したイベントです。

最終的な、参加者数 652 人(懇親会 267 人)であり、 Internet Week 2000 の中では最大のイベントとなりました。 最終プログラムや発表資料などは、 ここ から入手できます。