KAME プロジェクト便り

山本和彦
IIJ 技術研究所
BSD Magazine No. 12 (2002/06)


第12回 第3期のロードマップ

KAME プロジェクトの第3期(2002.04.01〜2004.03.31)が始まりました。 気分を一新し、 第3期のロードマップを作成してホームページに掲載しましたので、 ご覧になった方もいらっしゃると思います。 今回は、このロードマップに書かれている内容について説明します。


概要

KAME プロジェクトは、第3期を 2 つの年度に分け、 2002年度はこれまで同様に開発を進めていきます。 2003年度は、新たな開発は止め、 我々の成果をそれぞれの BSD へ還元することに専念します。 これは、KAME プロジェクトが終了した後も、 それぞれの BSD で改良保守ができるような体制を作るためです。

以下は、2002年度に開発すると掲げられた項目の説明です。


IPv6

DNS サーバ探索
エニーキャストを利用した DNS サーバ探索をできるだけ早く完了させる。
DHCPv6
DNS サーバの IPv6 アドレスを通知するための、 およびアドレス空間を割り当てるための DHCPv6 を横浜の IETF までに実装する。
ICMPv6 名前検索
最終仕様待ち。
Source Specific Multicast(SSM)
2002年9月までに SSM を実装。
Multicast DNS
仕様が頻繁に変るので辛いが、2003年3月までに仕様が固まることを期待。 現在の実装は、適宜仕様に追従させる。
スコープ付きアドレスの経路制御
2003年3月までに、 現在の経路表をスコープ付きアドレスをあらかじめ考慮した形に書き換える。
X ウインドウシステム
2002年9月までに、X ウインドウシステムを IPv6 に対応させ、 XF86 グループへ提供する。
Virtual Router Redundancy Protocol(VRRP)
2003年3月までに VRRP を実装する。

IPv6(重要でない)

ルータ選択
時間があれば2003年3月までに、 ルータ選択機能を実装する。 この変更には、 ルータ通知の実装をカーネル空間からユーザ空間へ移動させることも含まれる。
ISATAP
時間があれば2003年3月までに、ISPTAP を実装する。

MobileIP6

仕様が頻繁に変るので計画を立てにくいが、 大まかな予定は以下の通り。

横浜の IETF までにドラフト 17 を実装。 2002年9月に開催される ETSI のテストへ参加。

Connectathon までに次のドラフトを実装。 2003年冬に connectathon のテストへ参加。


IPsec

IPsec アーキテクチャの改訂版
仕様が公開されれば、それに追従。
IPsec ポリシ
KAME の IPsec ポリシの機能とAPI を2002年9月までに明文化する。 2003年3月までに、他のプロジェクトと協力して共通の IPsec ポリシ機構を設計し、 それに従って実装する。
鍵管理プロトコル(KMP)
IKEv1 に代わる KMP の標準化は2004年3月までには終らないと予想される。 そこで KAME としては、 たとえば JFK のような単純な鍵交換プロトコルを実装して終りにする。
IPsec の最小要求仕様
2002年9月までに、IPsec の最小要求仕様を明文化する。

その他

NAT/PT および SCTP に関しては、snap リリースにコードが含まれている。 しかしながら、KAME プロジェクトとしては正式にはこれらをサポートしていない。

これらに関する質問は snap-users へ投稿して構わないが、 KAME プロジェクトのメンバーからの返事は期待しないで頂きたい。 snap-users へ参加しているそれぞれの製作者から答えが返ってくるはずである。