KAME プロジェクト便り

山本和彦
IIJ 技術研究所
BSD Magazine No. 4 (2000/06)


第4回 IPv6 アプリケーションの状況

現時点で IPv6 に対応しているアプリケーションがたくさんあります。 これまで、その多くは IPv6 対応のパッチとして配布されていました。 現在、それらのパッチを本家に取り込んでもらう作業が進められています。 今回は、アプリケーションの現状について説明します。 (KAME プロジェクトの成果以外にも触れていることに注意して下さい。)


MTA

Sendmail (www.sendmail.org) は、 v8.10.0 から IPv6 を取り込みました。 SMTP/IPv6、つまり IPv6 で電子メールを配送できるようになります。 この件に関しては、WIDE プロジェクトの中村さんからの貢献が大きかったと思います。

他の有名な MTA としては、qmail があります。 qmail を IPv6 へ対応させるパッチが WIDE プロジェクトの藤原さんにより作成されていますが、 今のところ本家に取り込まれてはいません。(TODO には入っているようです。)

qmail のライバルである Postfix に関しては、 IPv6 対応のパッチの作成に取り組んでいる人がいます。

Emacs/XEmacs

Emacs/XEmacs では、 ELisp の open-network-stream という関数を使って TCP コネクションを確立できます。 この関数を IPv6 に対応させると、 Emacs/XEmacs で IPv6 の機能が使えます。 たとえば、Emacs/XEmacs 上のメールリーダが IPv6 対応の Sendmail と通信可能になります。

Emacs に関しては、KAME の須堯さんが作成された v20.6 用のパッチがあります。 しかし、まだ本家に戻す作業がなされていません。

XEmacs に関しては、 v21.2.28 から宇羅さんの書かれた IPv6 のコードが取り込まれました。 getaddrinfo() という C の関数がインストールされている環境で make すると、 IPv6 対応になります。

SSH/OpenSSH

SSH (www.ssh.org) に関しては、 WIDE プロジェクトの菊地さんが v1 のパッチを作成しています。 SSH v1 の開発は止まっていますので、 本家に取り込まれる可能性は低いでしょう。

菊地さんのパッチをもとに、藤原さんが OpenSSH (www.openssh.com) を IPv6 対応にするパッチを作成されました。 これはすでに OpenSSH に取り込まれており、 たとえば OpenBSD には標準で含まれています。

Mozilla

Mozilla (www.mozilla.org) が M15 から IPv6 対応になりました。 IPv6 を使って Web サーバにアクセスできます。 FTP/IPv6 への対応など、若干不備な点もありますが、大きな一歩といえます。

Perl

Perl (www.perl.org) v5 を IPv6 に対応させる一番の方法は、 getaddrinfo() という Perl の関数をモジュールとして提供することです。 この作業はもともと KAME プロジェクトの須堯さんと井上さんが進めていました。

現在、IMASY の梅本さんが改良版を本家に取り込んでもらうように努力されています。 名前付けのポリシに関する問題などから、 作業が遅れていますが、しばらくすれば CPAN に取り込まれるでしょう。

tcpdump

tcpdump (www.tcpdump.org) は v3.5 から、 KAME で発展させた IPv6/IPsec コードを取り込みました。 これは主に KAME プロジェクトの萩野さんの貢献です。 これからの tcpdump は、標準でIPv6/IPsec のパケットを解析できます。

quake

撃って撃って撃ちまくる quake (www.quakeforge.net) というネット対戦ゲームがあります。 このソースコードIPv6 対応していますので、IPv6 を使って対戦できます。