KAME プロジェクト便り

山本和彦
IIJ 技術研究所
BSD Magazine No. 15 (2003/3)


第15回 過去三ヶ月の出来事

今回は、過去三ヶ月間に起った出来事についてまとめます。


MIP6

2002年12月16日に、 仕様 No. 19 に対応した MIP6 (MobileIP6) の実装について正式にアナウンスしました。よい機会ですので、これまでの経緯をまとめたいと思います。

2002年5月ごろ、仕様が No. 15 から No. 17 となり、内容が大幅に変りました。 これに追従するために、コードの公開を一旦中断しました。 これ以降、非公開の特殊な設定をしない限り、 MIP6 の機能を使えないようになっていました。

6月に仕様 No. 18 が発行されました。 これに対応した実装を 9 月に ETSI plugtests に持ち込み、 相互接続の実験をしました。

仕様 No. 17 と 18 は、仕様が未熟でしたので、 これらに基づいた実装は正式には公開しませんでした。

10月に仕様 No. 19 が発行れ、曖昧な点が大幅に改善されました。 これに対応した実装は、公開する価値があると判断したため、 12 月にアナウンスした次第です。

仕様 No. 19 に対応した MIP6 の実装を利用する方法については、 このページを参照して下さい。

なお、最新は仕様 No. 20 で、IETF の last call がかかっています。 KAME では、仕様 No. 20 に対応中です。


racoon ML

IPsec の重要な要素として鍵交換プロトコル(IKE) があり、 KAME では racoon というデーモンとして実装しています。 これまで、racoon に関する話題は、snap-users で議論されてきました。

最近、racoon が Linux で採用されるかもしれないという動きがありました。 そこで 2002年11月13日、 USAGI プロジェクトのメンバーと一緒に racoon 専用の ML を立ち上げました。 アドレスは、racoon@kame.net です。

今後、racoon に関しての質問、バグレポート、パッチなどは、 この ML へ送って下さい。公用語は英語です。

入会方法などの情報は、このページから得られます。


TAHI 相互接続イベント

TAHI (www.tahi.org) の第4回目の相互接続イベントが、 幕張で1月20日から24日にかけて開催されました。

KAME プロジェクトは、プレフィックス割り当て、MIP6、ISATAP、 そして MLDv1 のテストのために参加しました。

プレフィックス割り当ては、夏ごろに大幅に仕様が変りましたので、 その仕様で相互接続できるかが大きなポイントでした。 KAME の実装は、他の複数の実装と問題なく通信できました。

また、MIP6 は仕様 No. 19 に基づいた実装を持ち込みました。 近年希に見るような心配りの行き届いたイベント運営のおかげで、 相互接続性の確認やバグの発見などの成果があがりました。


API本

萩野さん(いとぢゅん)が、IPv6 プログラミングの本を書きました。 書名は「IPv6 ネットワークプログラミング」で、価格は 3,200 円。 この原稿が掲載されるときにはアスキー出版局から出版されているはずです。 プロトコル・ファミリに依存しないプログラミングの方法が解説されています。 getaddrinfo()などの利用方法を学びたい人は、ぜひどうぞ。


Summit

2002年12月に、Global IPv6 Summit in Japan をパシフィコ横浜で開催しました。 今回で 3 回目であり、2002年は本会議に加えて 4 つのワークショップを設けました。

全体のプログラムは以下の通りです。(括弧内は参加者数。* 印は同時通訳あり。)

本会議の内容は、IPv6 マルチキャストによって放送されました。 また、WIDE プロジェクトもこの内容を収録しており、 英訳して web で公開する予定です。