山本和彦
IIJ 技術研究所
BSD Magazine No. 20 (2004/6)
今回は、活動期間の節目の話題を中心に、進捗を報告します。
2002年4月に KAME プロジェクトは、第三期を 2 つの年度に分け、それぞれに以下のような目標を設定しました。
これらの目標の内、「新たなプロトコルの実装やプロトコルの更新への追随」は、 満足のいく形で達成できました。
一方、技術移転については、 基本となるプロトコルとアプリケーションの両面において相当の進展がありましたが、 KAME プロジェクトの手を完全に離れて、 独自に保守を続けられるという理想の状態には至りませんでした。 この理由を以下にまとめます。
これまでの成果物や標準化活動により、IETF等で提案さ れた技術を実際に実装、検証、普及させるための大きな 牽引力として、KAMEプロジェクトは IETFや他の標準化団 体、技術者の間で高い評価を得ています。今後もその責 任と影響力はますます重大となっていくと考えられるの で、その期待に応えるべく努力を継続する必要がありま す。
このため、活動期間の延長を決定しました。第四期は、 2004年4月から2006年3月までの2年間となります。第四期 では必ずしも対象をIPv6に限定せず、IETF等で提案され た技術の内、広く一般のために有用であり、参加企業に ビジネス・チャンスをもたらすプロトコルを実装/検証 し、普及活動を継続していきます。
第四期で掲げる目標は、以下の通りです。
前回、特許問題を抱えるプロトコルは KAME ではサポートしないと説明しました。 これに関し、ある会社が利益を得るためでなく、 訴えられないようにするために取得した特許に対して、 あまり過剰に反応するべきでないという意見が内部から出ました。 また、特許の問題があることを知らずに作成したコードをこのまま捨ててしまうのは、 もったいないという意見もありました。
そこで、特許を持つ会社ときちんと交渉し、 KAME として実装して提供できるかたちにすべきだということになりました。 その第一歩として、特許の問題を持つプロトコルを洗い出し、状況を整理しました。 それらを以下に示します。優先順位の高いものから交渉していく予定です。
前回、snap の対象を FreeBSD 4 から 5 へ変更するかは、 まだ決っていないと報告しました。これについて、引き続き検討してきました。
KAME が作成した IPv6 や IPsec の主要な部分は、 すでに FreeBSD に取り込まれています。 ですから、FreeBSD 4 のみであってもIPv6 や IPsec の機能は利用できます。 そのため、FreeBSD 4 ユーザの内、安定指向の方が、 実験的な snap を利用することは希であるはずです。 そこで、snap の対象を FreeBSD 5 へ変更しても問題ないだろうということになりました。
次の回では、FreeBSD 5 のサポートについて詳しくお知らせできると思います。
2004年1月19日から23日にかけて開催された TAHI 相互接続試験に参加し、以下のような成果をあげました。
今年も N+I 2004 Tokyo において、 IPv6 ShowCase のブースが設置されます。 期間は6月30日から7月2日、場所は幕張メッセです。
ここ数年、KAME プロジェクトは IPv6 ShowCase に参加してきましたが、 今年は親プロジェクトである WIDE プロジェクトの名で参加することになりました。 デモとしては前出の NEMO を予定しています。
すでに何度か IPv6 ShowCase のミーティングがあり、デモの内容が話し合われました。 全体としてどんな仕掛けが考えられているかは、来場してのお楽しみですが、 一つだけリークしてしまいましょう。 今年は、IPv6 Ready Logoの付いた製品でブースを埋め尽くそうと計画されています。