KAME プロジェクト便り

山本和彦
IIJ 技術研究所
BSD Magazine No. 2 (1999/12)


第2回 KAME プロジェクトの近況

前回は KAME プロジェクトの名前の由来と IPv6 と(IPv4 と IPv6 用の)IPsec をフリーで提供するという目的について説明しました。 今回は、ML の種類、リリース状況、各 BSD へのマージ計画、 そして最近のイベントについて解説します。


ML

KAME プロジェクトでは、以下の 3 つの ML を公開しています。

core@kame.net
開発のコアメンバーが入っています。 開発メンバーに用事のある場合はここにメールを出してください。 個人宛に送るよりも返事が早く返ってくるでしょう。
snap-users@kame.net
snap リリースを利用しているユーザが入っています。 英語です。KAME の情報がほしい人は基本的にこの ML に入って下さい。
secretary@kame.net
KAMEパッケージを商用利用する際など、ライセンスに関する問い合わせ先です。

リリース

KAME パッケージのリリース形態には、 snap、stable、release があります。

snap
最新のコードのスナップショットです。 斬新なコードも安定性を気にせずに含まれていますので、注意が必要です。 ただ基本的な部分は安定しています。 毎週月曜にリリースしています。アナウンス先は、snap-users のみです。
stable
snap から不安定な部分を取り除き、さらにTAHI プロジェクトの検証を受けた安定バージョンです。 2 ヶ月に一度の割合でリリースし、 その旨を下記のメーリングリストにアナウンスしています。
6bone-jp@wide.ad.jp
ipng@sunroof.eng.sun.com
ipv6-jp@jp.freebsd.org
net@FreeBSD.ORG
netbsd-announce@netbsd.org
tech-net@netbsd.org
bsdi-users@bsdi.com
tech@openbsd.org (予定)
announce@openbsd.org (予定)
release
KAME プロジェクトの節目に出しています。 ユーザにとっては stable と同じです。

各 BSD へのマージ

今までバラバラだった各 BSD の IPv6、 IPv4-IPsec、IPv6-IPsec コードですが、 将来的にはほとんどが KAME パッケージに移行します。 現状を表 1 にまとめました。 現在 KAME が正式に組み込まれているのは NetBSD-current のみです。 その他の BSD には、 KAME プロジェクトはパッチ形式として KAME パッケージを提供しています。

表1: 現状

IPv4-IPsecIPv6IPv6-IPsecKAME パッチ
BSD/OS 3なしなしなしあり
BSD/OS 4NRLNRLNRLなし
FreeBSD 2.2.8なしなしなしあり
FreeBSD 3.3なしなしなしあり
FreeBSD-currentなしなしなしなし
NetBSD 1.4.1なしなしなしあり
NetBSD-currentKAMEKAMEKAMEなし
OpenBSD 2.5オリジナルなしなしあり
OpenBSD-currentオリジナルなし(*1)なしなし

(*1) カーネルにはNRLのIPv6コードが入っていますが、動きません。

4 つの BSD の将来の予定を表 2 に示します。 このように OpenBSD 以外はすべて KAME に移行する予定です。 セキュリティ機能が売り物の OpenBSD では、 オリジナルの IPv4-IPsec コードにこだわるようです。 OpenBSD オリジナルの IPsec のコードを KAME の IPv6 に対応させるのは大変です。 よって、OpenBSD で IPv6-IPsec がどうなるのかよく分かっていません。

表2: 将来

IPv4-IPsec IPv6 IPv6-IPsec
BSD/OS 4.2/5? KAMEKAMEKAME
FreeBSD-currentKAMEKAMEKAME
NetBSD-current KAMEKAMEKAME
OpenBSD-currentオリジナルKAME

イベント

WIDE/KAME プロジェクトがホスト役となり、 IETF IPng 分科会中間ミーティング を 1999年9月29日から10月1日に開催しました。 IETF に関連するミーティングを日本で開催するのははじめてのことであり、 意義が高かったと思います。

今回のテーマは、IPv6 環境におけるマルチホーミングでした。 10月1日の午後は、日本での IPv6 の活動を外国人に説明する時間を設けました。 IPv6 への日本からの貢献は特筆すべきものがあります。 今回はさらに理解を深めて頂けたと思います。

なお、参加者に配られた KAME T シャツは、 すでにプレミアがついているという噂があります。