デザートソング
山本和彦
2007年4月
そのルートに初めて触ったのは、昨年の5月。最初はクリップどころかムーブさえも起こせなかった。終了点は、とても遠く手の届かないものに思えた。
秋になり、また河又に通い出した。ひたすらそのルートにうち込み、ようやくすべてのムーブを解決。しかし、下からつなげてくると、上部がまったくこなせない。
最後のホールドを掴み、あと三歩上がれば完登というところで、身動きが取れなくなったこともあった。冬がやってきて、河又のシーズンは終わり、結局、今シーズンに登るという野望は果たせなかった。そのルートは、重圧として、いつも心の中にあった。
春になり、生活も落ち着いてきたので、先週からまた挑戦を開始。上のムーブを徹底的にさぐったが、ホールドを一つ変えただけで、基本的には今までのムーブが一番よいことが分かった。
2007年4月22日。簡単なルートが空かないので、いきなりアップで取り付く。一回目は各駅でムーブの確認。二回目が勝負という作戦だ。リソールしたためか、大理石のように磨かれたフットホールドに足を置いても今日は滑る気がしない。
2時間のレストの後、再び登り始める。あのカチホールドでのクリップも、コルネの持ち替えも、遠いアンダーを取るのも簡単に感じる。しかし、左足でのキョンが決まらず、不安定な体勢でガバを取りにいったときは、ダメかと思った。 いつもなら諦めるところが、今日は手が出る。
下から「十分に休め」と言われ、息があがっていることに気付き、ガバを何度も持ち替えながら息を整える。
そして、スローパー気味のホールドに右手を伸ばした。今日は持てる!カウンターから左のコルネを取り、体を引き上げてクリップ。
右への移動は、デッドで行く気だったが、単なる体重移動で右手が出せた。まだ手には十分力がある。登りきれることを確信し、慎重に最後の数手をこなして、ついに終了点!
延べ9日。ようやく登ったよ!「デザートソング」(5.12a)!バンザーイ!